埼玉県内の芸術活動グループ 

【会員個人作品】
 「坂本龍馬」肖像レリーフ制作の実演 (1)
油土を使って肖像レリーフを造る工程を、構想から完成までの制作進行に合わせ、紹介します。
レリーフを造ってみたい方へのヒントになればと思い、制作の進行具合をアップするだけでなく、“裏ワザ”を含めた技法や、材料・道具の解説も一緒にメモします。



2010年6月12日
「肖像レリーフの構想」

白岡市美術家協会のホームページに、レリーフ制作の様子をリアルタイムでアップしようという企画を思いつき、実行することにしました。
ひと口にレリーフと言ってもさまざまで、形が出来上がっていく段階を一般の方に面白く見ていただくためには粘土を使った基本的な作品がよいと思い、肖像レリーフを造ってみることにしました。

肖像レリーフを造ろうと決めたら、次にモデルとなる人物の選定です。
今回は、技法的なところをメインにして制作段階をご紹介する目的があるので、一般に良く知られた人物であることを条件に選び、幕末の志士「坂本龍馬」の肖像をつくることに決めました。
右ひじをついて立ちポーズする龍馬の一番有名な写真が基本となります。

<著作権とのからみ>
人の肖像をつくる場合には、肖像権の問題が発生することもあるので注意が必要です。
写真などを使用しても著作権の問題が“厳密”な意味からは発生します。
特に、それを商品化し、それによって該当する人物もしくは著作権保有者に損失を与える場合は絶対に許されない行為となります。
ただ、社会的常識として自分の顔をレリーフに作られ、不利益を被ったとクレームをつける人は少ないと思います。写真を利用する場合も写真の複写をそのまま使用すれば写真の所有者にとって不利益であり罪でしょうが、それを商業ベースではなく個人の楽しみとして絵画やレリーフにすることは許されるものと考えます。
したがって、ここでの制作も、あくまで個人の楽しみとして造るものとします。



「原図の作成」(約3時間)
造る人物が決まったら、予定しているレリーフの縦横比に合わせ原図を描きます。
鉛筆で描きながらその人物の特徴を頭に入れ、また古い写真などでかたちのはっきりしない部分は他の写真を参考にしたりして、自分で形を組み立てていきます。

レリーフの肉付けをする予行演習の気持ちで原図を描きます。
今回は洋画のキャンバスF4号に合わせて造る計画なので、最終的に縦33.3cm×横24.2cmに拡大コピーし原図とします。


<肖像レリーフでモデルを選ぶ時の要点>
もし、故人であれば複数の写真が必要です。
特に古い写真になると中間色のとんだ写真も多く、実際レリーフを造っていくと、形が読み取れないことに気付きます。そんな時は他の写真を参考にして、モデルとなっている人の本当の形を探り出して行きます。
やはり理想的なのは、造りたい人にモデルになってもらい、何枚もスケッチしてそれを基に造るのが一番です。

<モデルの表情>

瞬間的な表情・・・驚いた顔、笑い顔などは、避けた方が無難です。
造ってはいけないと言う意味ではありませんが、可笑しなレリーフになる可能性が高くなります。似せるという意味合いからは、横向きの顔ほど似せ易くなります。
それは、横を向くほどに顔の特徴がアウトラインとして表れ、個人を識別できるようになるからです。逆に、正面を向くほど粘土の肉付けで特徴を表すことになり、難しくなります。
余談ですが、欧米の肖像入りのコインに真横向きが多いのも、お金の体裁上、レリーフを薄くつくり、似せる必要があるからです。
一番落ち着いて観えるのは、いわゆる七三の角度。隠れた側の耳朶が少し見える程度です。
このあたりは絵画や写真のポートレートと共通していると思います。



「トレースの作成」(20分)
原図が完成したら、トレース用の線画を作成します。
これは、粘土でモデリング(肉付け)して行くためのガイドラインのようなものです。
必要に応じて制作中の粘土に重ね、位置決めの手がかりにします。
これを使えば形が引き写せて簡単と思われるでしょうが、粘土が付いていくに従いレリーフは立体になります。平面であるトレースを乗せて位置決めしようとしても相手が立体の場合は、正確な位置決めは不可能です。
「無いよりはマシ」程度に解釈して下さい。
 (トレースの様子が分かるように、右側半分に白紙を挟んでいます)

<使用しているトレーシングペーパーは紙製ではなくフィルム状のもの>
フジマットトレーシングペーパーを使用していますが、今は生産が中止されたので別のメーカーのものを使うしかありません。



● 中村和彦(第二部・彫刻)
 ・1951年 福岡県生
 ・東京藝術大学彫刻科・大学院を経て、造幣局工芸官
  現職にて貨幣・メダルなどの原型制作に携わりながら制作活動を行っている
 ・埼玉県美術家協会 彫刻部 委嘱
 ・白岡市美術家協会 会員
 ・個人のホームページは<こちら>から


次の制作過程へ>>




白岡市美術家協会のトップページへ戻る

メールは【ここ】をクリックし、メールソフトを利用しお送りください。

掲載している画像や文章などの無断転載および無断使用を禁止します。
個人情報保護基本方針(プライバシーポリシー)