油土を使って肖像レリーフを造る工程を、構想から完成までの制作進行に合わせ、紹介します。
レリーフを造ってみたい方へのヒントになればと思い、制作の進行具合をアップするだけでなく、“裏ワザ”を含めた技法や、材料・道具の解説も一緒にメモします。
2010年6月19日
「地山(じやま)作り」 石膏ベースの乾燥が終わったら、いよいよ粘土を使って地山を作ります。
地山は通常1~2cm位の高さで基本的には平らに作り、その上に肖像自体の肉付け(モデリング)を行うことになります。
建築で盛り土をしてその上に家を建てるのと似ています。
1~2cmの厚みをつける理由は、完成後に額装する際の事情及びレリーフの裏に補強材を入れる必要があるからです。

<ニス塗り>
乾燥した石膏ベースに、レリーフの地山となる縦横の寸法を書き入れ、鉄筆などで彫り込み線をつけます。地山を作る時の目安です。
油粘土の食いつきを良くするためにメタノールで希釈したシラックニスを塗ります。
写真では薄茶色の汚れた感じになっています。 |

<地山づくりのスタート>
油土を少量ずつ使い、石膏ベースに擦りつけるように伸ばして行きます。
レリーフはイーゼル等で立てて造るので、食いつきが悪いと粘土が剥がれ落ちることもあります。大きなレリーフの場合、石膏ベースに細い釘を打って紐を渡すこともあります。 |

石膏ベースに粘土が一皮付けば、あとはどんどん厚みをつけていきます。掌で丸い棒状に伸ばし、それを端から並べて押し付けると早く出来ます。
予定する縦横の寸法より少し大きめに粘土をつけます。 |
必要な厚みに達したら、麺棒などを使って表面を整えます。
均一な厚さの地山にしたいのならベニア板の厚みを利用してガイドをつくり、その上で麺棒を使うと早く仕上がります。
ここで大事なことは、地山の表面が作品の背景になると言うことです。
ですから、この段階までにどんな背景にするかを決めておく必要があります。
例えば背景に特異なマチエールや起伏をつけたいのであれば、人物の肉付けを行う前に形を作っておく方が無難です。 |

<地山の完成>
今回の背景はフラットな感じにする予定なので、ヘラ等をつくってさらに平滑面を出します。
使用しているヘラは片側はフラットな面づくり用、もう片側は櫛歯になっています。 |

<トレース>
予定の厚みで平滑な地山が出来たら、先に作ったトレースを地山の上に乗せます。
レリーフの四角が完全に入っていることを確かめたら、鉄筆を使ってトレースしていきます。 |

レリーフの四角、及び人物のアウトラインが大切なラインになります。
目鼻、衣服の細部などを描いても粘土をつければすぐ隠れてしまうので、“アタリ”程度で構いません。 |

<粘土へのトレース終了>
アウトライン以外は要所の位置を確認する程度のトレースです。
ここまでの工程は石膏ベースを寝かせての作業でしたが、いよいよ次の段階からイーゼルに立てた状態での仕事になります。
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● 中村和彦(第二部・彫刻)
・1951年 福岡県生
・東京藝術大学彫刻科・大学院を経て、造幣局工芸官
現職にて貨幣・メダルなどの原型制作に携わりながら制作活動を行っている
・埼玉県美術家協会 彫刻部 委嘱
・白岡市美術家協会 会員
・個人のホームページは<こちら>から
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