油土を使って肖像レリーフを造る工程を、構想から完成までの制作進行に合わせ、紹介します。
レリーフを造ってみたい方へのヒントになればと思い、制作の進行具合をアップするだけでなく、“裏ワザ”を含めた技法や、材料・道具の解説も一緒にメモします。
2010年6月20日
「肖像部分の制作(1)」 いよいよ今日から肖像部分の制作に入ります。
先にもメモしましたが、昨日までのテーブル上での職人的な作業から、イーゼルに立てての感覚優先の制作に入っていきます。
今回の制作は坂本龍馬の肖像がテーマです。
肖像であるかぎりモデルに似ている必要があります。
しかし、その前に人物像として造型的にしっかりとしたレリーフでなければいけません。
制作中はそのことを常に意識しながら、感覚の世界へ迷い込むことになります。
果たしてどんな出口に到達するのか、一番ワクワクする時です。
<肉付け開始>
肖像をつくる場合、私はいつものクセですが、眉間から粘土を置いていきます。
粘土にすれば小さなかたまりですが、レリーフにとっては大きな一歩です。月面着陸ほど大げさなことでもありませんが・・・・ |
全体的なバランスをみながら粘土をつけます。
この段階で目指しているのは、人間の形を面で追っていき、人体の構造的なところを意識しながら理想的なレリーフの高さ(肉厚)を決めることです。
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肖像の龍馬はだぶだぶとした着物を着ていますが、その中には人体の形があることを常に意識して粘土を置いていきます。 |
まだこの段階で「似せよう、早く目鼻をつけよう」とするのは大間違いです。
土台となる骨格や、基本的な人間の形が先です。 |
<横からも確認>
この段階で全体的な肉厚が自分の中で決定されます。 |
大きな面の変化を追って行きます。(面取りとも言います) |
手の動きは大きく。
形を出して行こうとするとついつい手の動きが小さくなります。
この段階では意識的に大胆に形を作り、作っては壊しを繰り返しながら進めます。 |
<荒付けの試行錯誤>
粘土の荒付けが一通り終わるとその段階でのチェックに入ります。
おおまかなところでの形の狂いがないかをチェックしながら粘土を置き、また削ります。
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今のところ、横からはこんな感じ。 |
レリーフを鑑賞するときはあまり斜めから見るものではありませんが、造る時には横から、下から、上からと様々な角度から見てつくるのも大事です。
けっこう形の間違いを発見できます。 |
● 中村和彦(第二部・彫刻)
・1951年 福岡県生
・東京藝術大学彫刻科・大学院を経て、造幣局工芸官
現職にて貨幣・メダルなどの原型制作に携わりながら制作活動を行っている
・埼玉県美術家協会 彫刻部 委嘱
・白岡市美術家協会 会員
・個人のホームページは<こちら>から
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