油土を使って肖像レリーフを造る工程を、構想から完成までの制作進行に合わせ、紹介します。
レリーフを造ってみたい方へのヒントになればと思い、制作の進行具合をアップするだけでなく、“裏ワザ”を含めた技法や、材料・道具の解説も一緒にメモします。
2010年6月28日
「肖像部分の制作(2)」 細部へ向かおうとする気持ちを抑え、まだ大まかな形を追って行きます。
ここで言う大まかな形とは、いいかげんとか荒っぽいとかの意味ではありません。
目鼻や眉毛口とか言う細部に捉われずその土台になっている顔・頭、或いは体の構造的な形のことです。
例えて言うと、今、数十メートル離れたところに好きな人が居るとします。
目鼻立ちが定かでなく服装が違っていても、全体的な印象から自分の好きなあの人だと解るはずです。
細部が捉えられなくとも、その人と判断できる「形や動き」が、つまり「大まかな形」です。
これは美術のどんなジャンルにも言えることでしょうが、全体的な調和を捉えるために作品や対象を遠くから眺めたり、薄ぼんやり目の焦点を違えたり、シャッタースピードよろしく瞬間的に見た印象で判断します。しげしげと見ているとよけい解からなくなる変な現象です。
~肉付け開始からここまで約6時間ほど~

<目鼻を仮置き> まだ全体的な形は不充分です。
自分の中で決着がつかず、まだ探っている状態です。
仮置きのつもりで目・鼻・口のかたまりをつけて見ます。
しっくり来ないようなら、やはり土台が狂っている証拠で、今までつくったところを壊す気持ちでつくり直します。
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<会ったこともない人をつくるのは大変>
龍馬のかなり鮮明な写真として3ポーズほどが知られています。
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<横、上、下から見るのも忘れずに> 形の土台づくりがある意味一番難しく、苦しい状況にもなります。
でも家づくりでの基礎工事、柱の組み立てあたりと同じですから、いい加減に手を抜くと後々、まずい家になって行きます。 |

<線ではなく面・かたまりとして形を追う> 「何か変・・・」「上手く行かない・・・」は、非常に大事な感覚です。
つきつめると制作は「何か変」なところを自分で感知しながらいろいろ工夫を凝らし、「変でない答え」を探す行為です。
「変だと感じる」から上達する道が開けるのであり、
「変でない」と思えばもうそれでお仕舞いです。 |
● 中村和彦(第二部・彫刻)
・1951年 福岡県生
・東京藝術大学彫刻科・大学院を経て、造幣局工芸官
現職にて貨幣・メダルなどの原型制作に携わりながら制作活動を行っている
・埼玉県美術家協会 彫刻部 委嘱
・白岡市美術家協会 会員
・個人のホームページは<こちら>から
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