埼玉県内の芸術活動グループ 

【会員個人作品】
 「坂本龍馬」肖像レリーフ制作の実演 (10)
油土を使って肖像レリーフを造る工程を、構想から完成までの制作進行に合わせ、紹介します。
レリーフを造ってみたい方へのヒントになればと思い、制作の進行具合をアップするだけでなく、“裏ワザ”を含めた技法や、材料・道具の解説も一緒にメモします。



2010年9月12日








「石膏取り」
サインも入れて粘土の段階を終了し、いよいよ石膏取りです。
油粘土はべたつき、微細なところは石膏で作業をした方が効率的です。
その辺のところをチェックし、次の段階の石膏取りに進みます。

粘土原型から石膏の凹型(めがた)をかたどりします。
粘土が完成してもその状態では作品として展示も出来ず、保存もままなりません。
テラコッタのように粘土を焼いて作品にする場合を除き、粘土での制作=塑造(そぞう)は、石膏に置き換えて原型とします。
またそれを基にブロンズや樹脂などにして完成とするので、石膏取りは欠かせない作業となります。

~粘土の段階が終了するまで約20時間ほど~



(1)
石膏ベースを作った時とおなじ要領で、薄い真鍮板を巻いて枠を作ります。
凹型はここに石膏を流し込んで作りますが、レリーフの高さに1センチほどプラスした厚みが必要なので、枠の高さはそれ以上でなければなりません。

(2)
石膏同士はくっつきやすく、凹型との剥離を容易にするため離型剤をかけます。
離型剤は基本的に石鹸をお湯で溶かしたものです。市販されているカリ石鹸と固形石鹸のミックスしたもの約20グラムに対して、お湯1リットルくらいの溶液です。60度C以上の高温ですと、油粘土の表面が溶けるので注意が必要です。
それと、離型剤の効きを良くするためには、元型の石膏が充分乾燥している必要があります。



(3)
元型は長径45センチ、短径42センチほどなので、流し込む石膏は水約4リットル、石膏粉で約5キロと計算しました。
元型に石鹸溶液の離型剤を掛け、浸み込まなくなって来たら、よく攪拌した石膏を流し込みます。
油粘土の場合、レリーフの表面で脂分の為に石膏が弾いたりします。その時は、やわらかい刷毛(羊毛の筆など)で石膏を塗るようにして馴染ませます。
そして、細かなところにも石膏が行き届くよう私はエアーコンプレッサーを使って流し込みを行っています。




(4)
レリーフの最高点から約1センチの高さになるまで石膏を流し込み、厚みをつければ終了です。
割り出しまで70分ほど待ちます。



(5)
石膏は硬化する際に発熱します。それが冷えたら充分に硬化した状態にあり、割り出しが出来ます。
割り出しには「くさび」状のノミと、木槌を使います。
真鍮板を外したら石膏を立て、合わせ目の真上にノミをあてがい、打ち込みます。
合わせ目に沿って均等にコツコツ木槌で打ち込んで行くと、パカッという小さな音とともに隙間が開きます。



(6)
全体的に合わせ目が開いたら慎重に台の上に寝かせ、流し込んだ側(凹型)を真っ直ぐ上に持ち上げて外します。
これで石膏取りの終了です。





(7)
凹型の状態です。
写真で言えばネガです。鯛焼きで言えばあの熱い鉄板です。
元型から外したばかりの凹型は油粘土の滓や石鹸の色が移って汚れています。油粘土の滓は「とも土」を押し当て、くっつけて掃除します。
汚れなどを出来るだけ掃除したら、金属のヘラなどを使って修正作業に入ります。



● 中村和彦(第二部・彫刻)
 ・1951年 福岡県生
 ・東京藝術大学彫刻科・大学院を経て、造幣局工芸官
  現職にて貨幣・メダルなどの原型制作に携わりながら制作活動を行っている
 ・埼玉県美術家協会 彫刻部 委嘱
 ・白岡市美術家協会 会員
 ・個人のホームページは<こちら>から


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