油土を使って肖像レリーフを造る工程を、構想から完成までの制作進行に合わせ、紹介します。
レリーフを造ってみたい方へのヒントになればと思い、制作の進行具合をアップするだけでなく、“裏ワザ”を含めた技法や、材料・道具の解説も一緒にメモします。
2010年9月26日
「石膏凹型での修正」 凹型で彫り込んだら、次の凸型では出っぱります。
それを念頭に置いて、粘土(凸型)で盛り足りなかったところ、或は凹型で細工がしやすいところを中心に整形します。
それともう一つ、全ての傾斜部分が間違いなく「抜け勾配」になっているか、チェックする必要があります。
これは非常に重要なことで、ここで紹介している元型を壊さない石膏取りの場合、「抜け勾配」になっていないと凸型と凹型が噛合って剥がれなくなります。
*先の粘土からの凹型の石膏取りでは、ひっかかる部分があっても粘土の方が石膏の固さに負けて剥がれるのでさほど問題ではありません。
石膏を削る作業には金属のヘラを使います。
たいがいのヘラは櫛歯(くしば)となっています。
その方が滑らかな形に整形できます。
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アウトラインの立ち上がり部分はオーバーハングになりやすく、引っ掛かりの原因となるので注意して修正します。
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「石膏凹型での修正」
細部まで修正が終えたら、凸型を作るための石膏取り作業を行います。
離型剤・石膏の具合などに注意して行いますが、特に石膏対石膏の型取りは神経を使います。
・・・そんなことで、石膏取りに集中していたら肝心の写真撮影を忘れました。
石膏取りが終わった状態です。
手順としては先の石膏取りと同じように、元型をよく乾燥させ、それに離型剤を掛けた後に石膏を流し込みます。
石膏の量は凹型と同じで水4ℓ、石膏5kgです。
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何とか凸型が取れました。
部分的に欠けがありますが、修正出来る範囲なので成功です。
欠けた部分はカケラを拾って接着したり、新たに石膏を用意して濡れている内に盛り付けます。
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腹部にかけてかなり修正しましたが、ほぼこれで石膏原型の完成です。
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*参考
石膏取りのために元型を充分に乾燥させなければなりません。
水気があると離型剤の効きが悪くなり、失敗につながるからです。
温風式の布団乾燥機を使い、ダンボール箱の中で乾燥させるのが効率的です。
● 中村和彦(第二部・彫刻)
・1951年 福岡県生
・東京藝術大学彫刻科・大学院を経て、造幣局工芸官
現職にて貨幣・メダルなどの原型制作に携わりながら制作活動を行っている
・埼玉県美術家協会 彫刻部 委嘱
・白岡市美術家協会 会員
・個人のホームページは<こちら>から
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